8月に読んだ本 ー ガストン・バシュラール『空間の詩学』、最果タヒ『百人一首という感情』、カレル・チャペック『園芸家12カ月』


8月に読んだ本のメモ。自分用の備忘録です。



・ガストン・バシュラール『空間の詩学』



難解だった。。何度も挫折しかけた。
が、数カ月かけて読み終えた。最後まで読まなければならないと思わせる何かがあったのだと思う。

詩学というタイトルのとおり、本書は詩について論じているが、学問と聞いて想像されるような、客観的、科学的な分析とはまったく異なっている。むしろ、そういったものを否定するところから始まる。
彼は、詩的想像力の世界の中に自らを没入させ、そこに生まれてくるイメージについてこと細かく観察し、記述する。
そして、詩を読み、詩的イメージの中に生きることは幸福であると説く。

彼の文章自体が詩に近く、理解するためには彼が見ている詩的イメージの世界に没入しなければならないようなところがあり、それが難解さの理由かも。
でも、読んでいて不思議な多幸感を感じたんですよね。心の深い部分で静かに対話しているような。
ちくま学芸文庫の表紙にバシュラールの写真が載っているんですが、それもあって、髭の長い穏やかなお爺さんと暖炉のそばで静かに語り合っているような気持になっていました。

都会がざわめく海であることは周知のことである。(p.80)

この一文がとにかく好き。ほかにもハッとさせられることばがたくさんあった。

・最果タヒ『百人一首という感情』

詩人である著者は、つねに歌の作者たちの一人称的な視点に立とうとするところから始める。その姿勢がすごい好きでした。それぞれの歌が作られた歴史的背景や言語学的知識についての説明は最小限にとどめられています。

百人一首の歌の作者たちの視点に立って感情をすくいあげようとすると、現代の私たちと同じ部分もあれば、文化や環境の違いから現代人には理解できない部分もあります。
そのどちらの感情に対しても、自身の内面を見つめつつ、真摯に向き合う最果タヒさんの言葉を通して、和歌というものが、時代は離れているけれど、確かに生きていた人々の生きた言葉であることがよりリアルに感じられる。


・カレル・チャペック『園芸家12カ月』

苦難とカオスと熱狂に満ちた園芸家たちの一年間。
季節ごとの「園芸家あるある」を面白おかしく描いたエッセイのような文章集。
園芸のことは全く知らないけれど、趣味に熱中する人々の姿を見ていると不思議と楽しそうに思えてくる。そういう意味では『腐女子のつづ井さん』と同系統の本かもしれないです。
つねに土と触れ合う園芸家という人種ならではの人生観が味わい深い。




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・8月の振り返り

バシュラールの本、ずっとカバンに入れていたのでボロボロになってしまった。
とにかくバシュラールを読むのが大変だったので、次の2冊はエッセイに近い軽めのものになった。難しくて全然読み進められない本をずーっと読んでいると、読書のリズムみたいなものを忘れてしまうんよね。



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